特集「村の公文書」展 (神山町郷土資料館所蔵資料より) 4

book村役場の一年 
        −昭和16(1941)年の上分上山−7月〜9月
【7 月】
  6日 国防婦人会主催で、「支那事変四周年記念式及出征帰還兵座談会」を国民学校で
      開催。
     [昭和12(1937)7月7日、中国北京郊外の盧溝橋で日中両国軍が衝突し日中全面
      戦争に突入。当初は簡単に終結すると考えた近衛内閣はこれを「北支事変」と命名し
      たが、戦争の長期化・泥沼化にともなって9月には「支那事変」と変更した]

名東郡の国防婦人会
写真4 「名西郡の国防婦人会」(久米家資料)

  7日 「支那事変記念日」。村役場職員一同が黒松八幡神社と忠魂碑を参拝。
 10日 臨時召集があり、収入役ら4人が令状(赤紙)交付事務などのために宿直。
     [10日〜17日に上分上山村では合計27人の臨時召集があり、そのうち、西部方面
      第33部隊(徳島)は15人、第36部隊(善通寺)は6人であった]
 13日 乳幼児体力一斉診査。
 15日 徴発馬が黒松八幡神社に集合。午前5時30分出発する。
      [阿野村では、軍用保護馬に登録されている29頭のうち12頭が、7月16日に
       輓馬として徴発された]
 16日 「壮丁身体検査」。
 19日 「学校ニ於テ三菱鉱業会社勝田鉱業所映画アリ。村長ヨリ紹介。十二時閉会。観覧者
      二百名」。
 21日 体力検査を実施(23日に第2日を実施)
     [昭和15(1940)年、国民の体力向上は単に個人の問題ではなく国策の核心をなす
      重要問題であるとして、政府は国民体力法を定めた。これをうけて、市町村は県警察
      部長の指揮の下で15歳〜19歳の男子を対象に体力検査(身体計測・疾病検診・運
      動機能検査)を毎年実施することになった。下分上山村では7月20・22日に123人
      が参加して体力検査を実施した旨、8月27日に村長が石井警察署長に報告してい
      る]
 23日 所属部隊より戦病死者の公報があり、留守宅へ通知・弔問。
 24日 県知事が村を視察。
 25日 第2回追加予算村会。銃後奉公会。国勢調査関係者へ記念品贈呈式。     
     [昭和13年に帝国軍人援護会が設立され、道府県に支部が置かれた。翌年、軍人援護
      事業を推進・強化するために市町村に設立したのが銃後奉公会である。部落会・町内
      会が活動の中心となり、兵役義務を果たさせるための支援、応召兵士の留守宅で労
      働奉仕、県学務課の割り当て数にもとづいて慰問袋の供出などを行った。] 
 26日 森林組合設立について協議会。
 27日 7・8月分の軍事扶助を支払い。
     [父親や息子が召集され、生活が困難になった家族を救済するために軍事扶助法(昭
      和12年制定)があった。家族から県知事に申請し、認められると日額30銭〜40銭が
      支給された。この年、上分上山村では25件の申請があった]
 28日 国民学校で在郷軍人会総会。村長が出席。
     [明治43(1910)年に陸軍省の指導で帝国在郷軍人会が発足した。翌年、県支部、
      郡市に連合分会、町村に分会が置かれた。昭和11(1936)年には勅令によって陸海
      軍省の公式機関となり、戦時下の国民統制と動員に重要な役割を果たした。
      昭和3(1928)年、上分上山村では、在郷軍人会の発案で村に御大典記念の射撃場
      が寄付金で建設された]
 29日 下分上山国民学校で陸軍在郷兵の簡閲・点呼を実施。
 30日 村常会。

【8 月】
  4日 江田橋復旧工事費の寄付問題を協議。各部落に700円割り当てが決定。
  5日 稲作害虫の駆除・予防のため、村・常会共同で実行組合会を開催。
  6日 警防団幹事講習会。灯火管制実施上の協議。神領村佐々木医院で国民体力検査の
      精密検診を実施。
  7日 国民学校で壮丁身体検査・乳幼児診査を実施。
 10日 南谷線道路復旧工事について現地協議。
 13日 「豪雨出水、町村道路・県道・河川護岸被害多し」。
 15日 「風水害被害甚大。流出家屋一 道路決壊二十カ所 床上浸水二 床下浸水五 半壊
       二戸」
 21日 防空演習。北谷道路復旧区長会。
 26日 林道災害のため調査官が来村、26日〜28日各線を調査。
 28日 村常会。
 29日 国民貯蓄組合長会。

国道193号線(上分金泉)
写真5 「国道193号線(上分金泉)」(『神山町史』より)
 
【9 月】
 12日 本日より災害土木検査・設計・測量。
 14日 農林省調査官、北谷・中谷の各災害地を現地調査。
 17日 午後7時より国民学校で、佐藤大佐の時局講演会。
 21日 午後9時10分、海軍充員召集がある。
 24日 納税組長会。

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