文書館の逸品展「江戸時代阿波人の見た世界地図・日本地図」展示資料紹介1

『八紘通誌(はっこうつうし)』


八紘通誌(はっこうつうし) 小編3冊(全2編6冊)嘉永4年刊 箕作阮甫著
ニシノ02517〜19
蘭学者、箕作阮甫(みつくりげんぽ)が著した世界地理書。展示品は、嘉永4年(1851)刊行のヨーロッパ編初編3巻であるが第1巻には、 嘉永3年作成の正確なヨーロッパ全図(ドイツ、ゴッター府刊の原図による)1葉と、ヨーロッパ総説およびポルトガル、スペイン、イタリア、フランス、イギリスなどの地誌、 第2巻はオランダ、ベルギー、スイス、ドイツ、オーストリアなどの地誌、第3巻はポーランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、トルコ、ギリシャなどの地誌を掲載している。 記述は、面積・人口・歴史・主な都市・産業・人種・宗教・軍隊・教育まで多岐にわたる。 凡例によれば、ベルギー地誌(1830刊)を始め12種類の洋書を引用編集し作成されたと記している。 嘉永4年に出版された本書は、ペリー来航以降の幕末対外交渉に大きな影響を与えた。
 箕作阮甫(寛政11年9月7日(1799)〜文久3年6月17日(1863))は、美作国津山生まれの蘭学者。 元は津山藩の待医であったが、江戸へ出て幕府天文台翻訳員となり、ペリー来航時に米大統領国書を翻訳、また対露交渉団の一員として長崎に出向している。 その後蕃書調所の主席教授に任ぜられ、幕巨に取立てられた。 当時江戸蘭学の第一人者とされていた。

※画面をクリックすると拡大します。




『写真1 表紙写真』





『写真2 ヨーロッパの図』

凡例に、「本図2員ハ弘化4年ドイツゴッタ府において螻するところのものを模写して木に上す(版木を作成した)」とある





『写真3 仏蘭西(フランス)』

 フランスについての記述は、「近50年の喪乱に由て、その名大いに世に顕著せる一大邦なり」という一文から始まり、 ブルボン王朝の崩壊・共和国の成立・ナポレオンの出現などから説き起こしている。





『写真4 大貌丹亜、愛倫(グレートブリテン、アイルランド)(イギリス)の頃』

イギリスについての記述は、「二大国大貌丹亜、英吉利(イングランド)斯葛蘭(スコットランド)の2大国を称めこの名を命ず」という国名の説明から始まっている。 「鉄工業・絹織物・毛織物」などの工業が発達し、「この国の公益は全世界中に繁滋し至らざるところ無し」と記してある。