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徳島の幕末・維新史シリーズ

「御触控」・「諸控」・「御用録」・「草案」などから変革期の人々の日常を順次紹介します。

【第1回】・【第2回】・【第3回】


【第2回】 

残された旅の栞

 おかげ参り心得

                                   美馬郡半田村 酒井家文書(当館所蔵)より

  
江戸時代、伊勢神宮への庶民の群参が周期的に流行した。神仏への信仰もさることながら人びとは日常から抜け出て、自己解放の旅に出たので「御蔭参り」とも「御抜け参り」とも呼ばれた。文政十三年のそれは阿波から始まり、やがて全国に流行することになったと「浮世の有りさま」など各種文献は伝える。

   ここに一枚の旅の栞がある。題して『おかげ参り心得』。阿波の商人で粋人でもあった酒井弥蔵が携えていたものであろう。この「心得」のなかには庶民のしたたかさとともに、時代のうつろいを予感する者たちの智慧が垣間見えておもしろい。「おかげ参り」はやがて慶応四年の「ええじゃないか」運動へとつながる。残された「旅の栞」 は次の時代を予告しているようである。



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おかげ参り心得

一、つれにはぐれぬやう 同行ミなミななわほそ引につられ

  行へし もしはぐれたらバ たづね所と書たる札ある所へ

  たのむへし

一、ろぎんハ めいめいわけてもつへし 一人もつへからす

一、ごまのはいといふものハ 人をだまして金をとるものなり

  或は一両にもなるものを 一歩にてかわせ しんせつなる

  事をいふて 道づれになり 同じやどにとまりなどして

  荷もつきるいかねをぬすミ逃行 其外いろいろしかた

  多し ゆだんすべからす 欲にかかるへからす 皆うそなり

一、せげうハ めし かゆ ぜに かご 馬 車 やど 其外

  いろいろ所々にあり

  右せげう 人数多けれハ 誠に広太也 はらすかぬうちに

  もらふへからす 所々あれハよん處なき時ばかりに

  すべし 心なくもらへハ 後にばちあたるへし

一、宮川の外ハなさけもなく 舟ちんおふくとらんといふとも

  たのむへし 舟にのるにいそぐへからす 腰ふところに気

  を付るへし

一、宮川より十七八丁行て外宮なり 外宮より内宮へ五十丁也

  内外御本社の外 末社に宮人ありてさんせんをおふく

  なげよといふとも 銭すくなく又ハ志なけれハ一せんも

  なげるにおよバす             松阪

    文政十三庚寅壬三月 上旬     施   何 某

 

 〔用語解説〕

 ろぎん(路銀) 旅用の金。旅費。

 ごまのはい(護摩の灰・胡麻の蠅) 旅人らしく装って、旅人

         をだまし財物をかすめる盗賊。

 せげう(施行) ほどこし。

 宮川      伊勢神宮の近くを流れる川。

 さんせん(散銭)神仏に奉る銭。賽銭(さいせん)のこと。

 



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